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執筆者の写真反田孝之

ごぼうの腐れが悩ましい

ごぼうの出荷を本格的に始めてから実質16年目になる。この間、新規就農者の身では当然のことながら出荷先にゴボウの品質の点でご迷惑をかけてきた。


一番多いのが、腐れ。店舗に並んで程なく、またひどい時にはゴボウが到着して箱を開けたときすでにゴボウが腐ってしまっているのである。


その都度状況を聞き、写真を送ってもらい、対策をとってきた。そして状況や原因には何パターンかあることが分かってきた。今年は少し多く、先日2度目の腐れの苦情がきたばかり。写真をみた時には驚いた。これはひどい。短期間でなぜこんな腐れ方をするのだ。ひどすぎてここではちょっと紹介できない。


しかしこのたびも原因は分かったつもりで対策も「たぶん」大丈夫。しかし「たぶん」としか言えない。ゴボウは工場で人間が作った製品ではなく、生き物だからである。

腐る原因を考える時に、それを腐敗菌のせいにして殺菌剤を使おうと考えることは簡単である。しかし待て、腐敗菌はゴボウ自体が弱いから活躍することができるのだから、原因はゴボウが弱いからということもできる。いや、少々弱くても腐敗菌がいても冷蔵環境なら腐ることはない、原因は高温だ、ということもできる。しかし輸送中の高温はクール便を使わない限り我々にはどうにもできない。

だから対策を手っ取り早く考えれば、殺菌剤など使う気がさらさらない我々としては、例えば生命力が弱くて腐れやすいものにはあらかじめ腐ってもらって、残った元気なものだけを出荷する、という手法が真っ先に思い浮かぶ。幸いゴボウには一定期間の保管で熟成するという性質がある。


そして言うまでもなく、生命力の強いゴボウを育てるということになる。それがまさに自然栽培で目指していることでもある。そして自然栽培歴を地味に積み上げてきた。


しかしこのたび頭を抱えているのが、このたびの腐れの原因は、圃場由来の要素が明らかに大きいだろうということである。つまりゴボウが弱い。それで出荷前の対策だけで100%解決することができない。このたびの収穫圃場は自然栽培歴を13年重ねた。しかし自然栽培を始める以前に無知により鶏糞をどかすか投入した圃場でもあり、この4年間で2度も洪水時に山土が多く堆積した圃場でもある。それらのせいだろうか、ゴボウがいくらか弱いと思っている。そしてさらに気になるのが4年前の洪水で収穫直前のほぼ全量のゴボウを土の中で腐らせたことである。このことの影響はないだろうか。


ちなみに、ゴボウ栽培ではトレンチャーが必須だろうと思っているのだが、このトレンチャーがけで不自然なものをいかに土中深くに送り込まないかがカギである。物理的に無理だが理想は表土すらもである。深くまで団粒構造を作ろうとする自然栽培の標準的手法に反して、ゴボウ栽培には下層は痩せてるくらいがいいというのが私の持論だ。これまでに送り込んできたものは仕方がないとして、これからをしっかりやるしかない。そのためには直近ネタとしてロータリーの更新時にも工夫を凝らす。これなど思いついてからようやくの10年越しの工夫だ。地味だがこういうところをやっていく。でなければ、うちを信頼して取引きを続けてくれる相手に申し訳がない。

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